東北労災への問い合わせで「私は扶養のままで大丈夫でしょうか?」や「扶養されていると労災保険に入れないと言われた」など、扶養についての質問が多いです。
では、扶養って何なのでしょうか?そして扶養家族って誰の事を指しているのでしょうか?また、確定申告の際の扶養控除はどうしたらいいのでしょう?
ここでは、扶養の意味(定義)と扶養であることのメリット・デメリットを確認していきましょう。
目次
扶養の意味
辞典から調べると、「扶養とは助け養う事。生活の面倒を見る事」となります。例文では「子供たちを扶養する」という風に使います。
法律的には「自力で生活を維持することが困難な者の生活維持のため、親族間で必要な支援・援助をする事」となります。
民法においては、独立して生計を営めない者(要扶助者)の生活を援助することとなります。そして、扶養をする義務のある者を「扶養義務者」実際に何らかの援助を受けて扶養されている者を「被扶養者」と言い表します。
いずれにせよ、扶養に関しては「扶養法」で定められていますが、法律用語でいうとまた難しくなりますよね。
もっとも簡単に表すと「収入がある者が、収入が少ない、または無い者の生活維持を助ける」ことを扶養すると言い表しても良いでしょう。
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扶養家族とは?
扶養の意味を理解すれば、扶養家族の意味が何となく理解できるかと思います。
扶養家族とは、扶養される者(被扶養者)がある家族の事を表します。ですから、扶養義務者が被扶養者の事を「うちには扶養家族がいます」と表します。いずれにせよ、家族の中で何らかの理由により、一定以上の収入が無く、独立して生活を維持する事ができない者がいる場合は「扶養家族がある」状態になります。
ここで間違えてはいけないのが、扶養されることは決して恥ずかしい事でも、恥じる事でもありません。例えば「夫が収入を主として、妻・子は生計をたてる」または「夫が一人親方になって間もないため、妻が収入を得て生計をたてる」、反対に「妻が主たる収入を得て、夫・子供は生計をたてる」という事など、普通の事ですよね。
何らかの目的があり(または事由があり)、その間は扶養となる事は決して恥じる事でも何でもありません。
さて、扶養の定義には「税法上の扶養の定義」と「健康保険法上の扶養の定義」と大きく分けて2種類があるのをご存知ですか?
次の章では、それぞれの定義の違いについて説明していきます。
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健康保険上の扶養
健康保険上と言っても、国民健康保険か社会保険(協会けんぽや会社の保険組合等の医療保険)によって、扶養の定義が異なります。
国民健康保険には「扶養」という定義は、実はありません。ですので、1月1日から12月31日までの「世帯総所得」によって保険料が変わります。家族全員で所得を上げると保険料が高くなり、反対に家族の総所得が低くなると、保険料が低くなります。
社会保険での扶養の定義は以下の4要件のすべてに当てはまる人です。この要件は「協会けんぽ」での要件となります。
(1)配偶者や子、孫、兄弟、父母などの直系親族であること。
(2)上記以外の3親等内の親族(義理の父母・兄弟等)で同居している人
(3)戸籍上の配偶者でなくても、内縁の配偶者の父母、連れ子で同居している人
(4)年間の収入が130万円未満(60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害の場合は180万円未満)であり、被保険者の年間収入の1/2未満であること。
収入に関しては、(4)の条件を満たしていなくても、被保険者の年収を上回らず、世帯の生計の状況を果たしていると認められた場合は被扶養者となります。
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税法上の扶養
税法上の扶養の定義は、国税庁のホームページにも記載されています。
下記の4要件のすべてに当てはまる人ですので確認していきましょう。
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は白色申告者の事業専従者でないこと。
事業専従者とは、個人事業主(社長や一人親方)と生計を一にする配偶者や15歳以上の親族で、年間6カ月以上その事業にもっぱら従事している人のことを言います。
例えば、給与は経費として計上できますが、家族(生計を一にする)への給与は経費にできません。しかし、白色申告の場合は「専従者控除」という制度がありますので原則としてという話になります。
また、生計を一にするとは必ず同居していなければならないという事ではありません。子供が学生で一人暮らしをしている場合、生活費や学費などの仕送りをしている事実があれば認められます。
これはご存知かと思いますが、所得金額とは収入金額から基礎控除等を引いて、さらに必要経費を引いた後の利益の事を言います。
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扶養であることのメリット・デメリット
扶養とは、メリットやデメリットを考えてなるものではありません。しかしながら、良くも悪しくもそのことは出てきてしまいます。ここでは、その良し悪しを参考にしていきましょう。
健康保険上のメリット
- 保険料は扶養義務者が負担するため、保険料を支払わなくても健康保険証(医療保険)がもらえる
- 健康診断が受けられる(組合などの規定による)
- 予防接種や健康増進などの補助を受ける事ができる(組合などの規定による)
健康保険上のデメリット
- 年間の収入を気にしていなくてはならない
- 行政の国民健康保険では「扶養」の概念はない
- 収入を超えた場合は、扶養から外れるなどの措置を行わなければならない
次に税法上のメリット・デメリットです。
税法上のメリット
- 扶養控除などの控除を受ける事ができる
- 控除を受ける事により、所得税を抑えることができる
税法上のデメリット
- 年間所得を気にしていなくてはならない
- 年間所得を押さえすぎると、いざという時に金融機関から融資を受けられなくなる
- 所得税の事を考えすぎてもあまり意味がない
まとめ
いかがでしたでしょうか?
扶養と言っても一概に簡単に言えるものではありません。
健康保険上と税法上でも違う、という事を理解していただけたでしょうか?
ここではメリット・デメリットでも記載していますが、メリットとデメリットを考えて扶養とすることを検討するのは、本来の意味を逸脱してしまいますよね。
こう考えればスッキリしますよ。
健康保険上
- 配偶者が正社員で健康保険を配偶者の保険者にしている場合は、一人親方の年収入が130万円を超え、配偶者の年間給与の1/2以上ある時は、被扶養者から外す。国保は行政の国保と職域国保(建設業専門の国保)のどちらかを検討する
税法上
- 年間所得が38万円以上ある場合は、扶養から外す。確定申告時に収入を得るための必要経費を計算し、さらに基礎控除と各種控除を受け、適宜申告をする。
このようにすれば、スッキリして仕事に専念できるかと思います。
そして、最後に注意しなければならないのは「配偶者が申告時には、扶養控除を行わない」ことを忘れずに。